寄り道
その日の同行者は、自転車で見にいきたいくらい海が好きだそうだ。僕は幼少期海のそばで暮らしていたので、むしろ川に憧れを持っていたけれど。しかし、昼間のbirdに今歌って欲しかったくらい、国道から見える夕暮れの西向きの太平洋の光は美しく、小高い場所にさしかかったところで、長い長い砂浜が見えた。
どこかで浜に降りれないのかと同行者。なんとなく早く帰りたい僕は、行くんすかと思いつつよっしゃとは言ったものの、浜方面に折れる道がなくて、やっと見つけた交差点で左折するも、海岸と平行な道路に入り、いっこうに海の方向に行けない。ようやく気分が乗ってきたところで、公衆トイレ有りの標識で曲がって海と街の間のマウンドを登ると、ピンクからブルーのパステルの空となんとも言えない白と紺の海が松林の間に見えた。
二人ともやんごとないぞと直感したんでしょう。うきうきして車を乗り捨て、防潮堤沿いの地元の人専用散歩道を抜けると、見渡すかぎり人影のない数キロ続く砂浜で、ドーンという波音が響くなか、ポツンと父親と幼子2人が砂遊びをしていた。
こういう瞬間が、寄り道には潜んでいる。
Nov.12, 2022