『NOPE』

久々に再会した友人夫妻のお勧めは『NOPE』できればIMAXで。出張中時間もあったのでレイトショーに行った。

初めてのIMAXで予備知識もないまま劇場に入り、500席超のほぼ埋まった客席を見上げながら、階段を上がっていく。座席の寸法にゆとりがあって、縦長(というわけではないけど)の画面・席数・席の高低差の加減で、ものすごく天井が高い。客のそれぞれの楽しみが伝染してくるような、舞台を祝福しているような空間だった。

特にこれを初回に据えた理由はないけれど、前述の友人に文章を書いてみてはともいわれたのです(ありがとう)。それにしても、文章にできそうな対象とそうでないものの、観た後しばらくの僕にはたぶん後者で、でも書きたいと思わない部類ではなくて、好きなのだけど言葉にしづらい。

物語全体としてはクローズするけど、個々のエピソードはオープンエンド(サスペンス)。

UFOが巨大生命体だったという安っぽくなりそうなオチにもかかわらず、ひとつひとつ引き込まれる出来事・人物が出てくる。

例えば、、、何が起こっても表情の変化も言葉も少なな主人公、その逆の妹、落下してきたコインで死んだ父、初めての映画被写体になった曽曽曽?祖父、コメディ番組でのチンパンジー逆上殺人事件、殺されなかったアジア人役者との同胞意識、テーマのよくわからないテーマパーク、空に向けた監視カメラと鏡筒となる井戸、それとIMAXカメラ、荒野のナイター照明、グレイの仮装、電力不安定と爆音レコード、動かない雲、血の雨が降る家、ソナーとしての風船人形、アナログな生命体の食道、ミラーヘルメット記者、風船人形爆弾、馬とバイク、などなど。

それぞれがほんの少しずつつながっている程度の、本気にすることのできない出来事を本気で撮っている。

日本の場合コメディタッチでお茶を濁しがちなところを、ここまで仕上げられたのはもちろん予算面が大きいのだろうけど、製作側の真剣さはもちろん、その真剣さに対する社会側のリスペクトがあればこそなのだろう。これは科学の基礎研究に対するそれと地続きだと思う。

とりとめがなくなってしまいましたが、言葉にすることで、言葉にならないことも浮かび上がることを期待して、書くことも少し続けてみようと思います。

Oct.13, 2022